銀行 (ぎんこう、Bank)

銀行 (ぎんこう、Bank) とは、預金の受入、資金の移動(決済)や貸出(融資)、手形・小切手の発行などを行う金融機関である。

銀行の起源
現在のような形態の銀行が誕生したのは、中世末期のイギリスにおいてである。

当時、主要な決済手段は金であった。貨幣経済の興隆に伴い商業取引が増大し、多額の金を抱える者が出てきた。金を手元に抱え込むリスクを懸念した金所有者は、ロンドンでも一番頑丈な金庫を持つとされた金細工商・ゴールドスミスに金を預けることにした。ゴールドスミスは金を預かる際に、預り証を金所有者に渡した。

しばらくして、ゴールドスミスは自分に預けられている金が常に一定量を下回らないことに気付いた。これは、支払いに用いられた金を、受け取った業者がすぐに預けに来ることが原因であった。また、中にはキリのいい単位で金を預け、その預り証をそのまま取引に用いる金所有者も現れた。

ゴールドスミスは、預けられた金を運用しても預金支払い不能にならないことを知り、貸し出し運用を開始した。これが銀行の始まりであり、この過程で生まれた預り証が、現代の紙幣の起源である。紙幣(預り証)は金の預金証書であり、価値の裏づけがなされているから価値を持つことが出来た(金本位制も参照)。

また、貸し出した金も再び預け入れられ再度貸し出しに回ることにより、預り証が大量発行され、貨幣経済成長の原動力となった。このように、預り証を保証する金よりも、預り証の量が多くなることを信用創造と呼び、現代の銀行においても重要な機能である。

やがてイギリス全土に同業者が現れ、それぞれが独自の預り証を発行するようになり、多種多様な紙幣が現れた。しかし、それぞれの紙幣が業者の信用力に依存することになったため、やがて預り証を発行する権限を持つ銀行が統合され、中央銀行となった。それ以外の銀行は、預り証を預かる商業銀行として発展することになる。

増加した貨幣(預り証)の価値を保証しているのは、借手の返済力である。このため、借手の経営が危機に陥ると貨幣も信用を喪失した(金融危機)。そのため19世紀から今日まで、金融危機に端を発する恐慌が頻発している(1927年の日本における昭和金融恐慌など)。

日本では江戸時代に、「両替商」と言う銀行に近い商売があった。初の商業銀行は、明治維新後に誕生した第一国立銀行(旧:第一勧業銀行を経て、現在のみずほ銀行)となっている。これは日本初の株式会社(解釈により異なる場合があるが)でもあった。


業務の範囲
銀行は次の業務を営む。

預金(普通預金・定期預金等)又は定期積金等の受入れ
資金の貸付け又は手形の割引
内国為替取引(送金・振込等)
外国為替取引
債務の保証又は手形の引受け
有価証券の売買、有価証券店頭デリバティブ取引、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引又は外国市場証券先物取引
有価証券の貸付け
国債、地方債若しくは政府保証債の引受け又は当該引受けに係る国債等の募集の取扱い
金銭債権の取得又は譲渡
特定目的会社が発行する特定社債等の引受け又は当該引受けに係る特定社債等の募集の取扱い
短期社債等の取得又は譲渡
有価証券の私募の取扱い
地方債又は社債その他の債券の募集又は管理の受託
銀行その他金融業を行う者の業務の代理
国、地方公共団体、会社等の金銭の収納その他金銭に係る事務の取扱い
有価証券、貴金属その他の物品の保護預り(貸出金庫)
両替
取引所金融先物取引等
金融先物取引の受託等
金融等デリバティブ取引(金利、通貨の価格、商品の価格その他の指標の数値としてあらかじめ当事者間で約定された数値と将来の一定の時期における現実の当該指標の数値の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引又はこれに類似する取引)
金融等デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理
有価証券店頭デリバティブ取引
有価証券店頭デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理

銀行の区分
日本においては、慣習的に次の様に区分される。一般に「銀行」という場合、銀行法に基づく銀行(いわゆる普通銀行)を指す。銀行法第6条により、(銀行法に定める)銀行は「銀行」を名称につけることが義務付けられており、銀行でないものは、「銀行」を名称につけることが禁止されているからである。中央銀行や政府系金融機関も、銀行法ではなく個別の法律により、その設立が規定されている(日本銀行法など)。

中央銀行 - 日本銀行
市中銀行
普通銀行
全国的な銀行
メガバンク - みずほ・みずほコーポレート(みずほフィナンシャルグループ)、三菱東京UFJ(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、三井住友(三井住友フィナンシャルグループ)
その他 - りそな(りそなグループ)、新生、あおぞら
地域銀行
地方銀行 - 全国地方銀行協会加盟64行(七十七、横浜、八十二、北陸など)
第二地方銀行 - 第二地方銀行協会加盟48行(1989年2月1日以降に相互銀行から普通銀行に転換した46行、信用金庫から転換した八千代、及び破綻した第二地銀加盟行の営業を譲り受けた東京スター)
都市銀行- 埼玉りそな
新たな形態の銀行
インターネット専業 - ジャパンネット、イーバンク及びソニー
ATM網の全国展開 - セブン(旧アイワイバンク)
中小企業への融資 - 日本振興、新銀行東京
信託銀行
個人向け信託業務を行う信託銀行(かっての「専業信託」) - 三菱UFJ信託、住友信託、みずほ信託、中央三井信託
外国銀行系信託銀行 - 日興シティ信託、モルガン信託、クレディ・スイス信託など
金融機関または一般企業の子会社である信託銀行 - 野村信託、りそな信託、オリックス信託など
マスタートラスト、資産管理に特化した信託銀行 - 日本マスタートラスト信託、資産管理サービス信託銀行、日本トラスティ・サービス信託
外国銀行 - シティバンク 、SC第一ほか
承継銀行 - 第二日本承継
特殊銀行(政府系金融機関) - 国際協力、日本政策投資
その他 - 整理回収機構

かつて存在した形態の銀行
国立銀行 → 明治時代初期に国立銀行条例に基づき設置、経営は民間で行われていたが政府に代わって紙幣発行などの公的業務も行う。日本銀行設立後、普通銀行に転換
貯蓄銀行 → 普通銀行に転換
相互銀行 → 普通銀行に転換(早期に転換し、都市銀行(日本相互→太陽)又は地方銀行(西日本相互→西日本、弘前相互→青和と合併しみちのく)となった一部を除き第二地方銀行協会を構成)
外国為替専門銀行 - 東京(現三菱東京UFJ。外国為替銀行法に基づく唯一の銀行として営業していたが、三菱銀行との合併に伴い消滅)
長期信用銀行 - 日本興業(現みずほ、みずほコーポレート)、日本長期信用(現新生)、日本債券信用(現あおぞら)(長期信用銀行法に基づく銀行として営業。2006年4月までに全て普通銀行に転換または普銀に合併)

銀行と協同組織金融機関
日本では、法律に基づかない預金の受入れは出資法第2条で禁止されているが、銀行以外に信用金庫・信用協同組合・農業協同組合・漁業協同組合・労働金庫など、特別法により預貯金の受入れを業とする金融機関(協同組織金融機関)が存在する。商業銀行も営利会社といえど、金融の高い公共性を担う存在として銀行法はじめ様々な法令の規制下におかれるが、協同組織金融機関は特に金融事業の便益を、様々な層の国民があまねく享受するための事業形態として発生、発達してきた。

協同組織金融機関は、一般に利用者(組合員・会員)自身の出資に拠って存立し、営利でない組合員奉仕の運営原則の下、業務の対象が業容や地域、属性により制限される代わりに有利な税制、商品性を認められる。特に出資については、株式と異なり組合員・会員(総代)の議決権は、出資額にかかわらず一個である。会社と違い、資本の掌握による会社経営の支配は、協同組織金融機関については不可能である。
資本主義の勃興期において、銀行は財閥や産業資本家によって設立され、庶民を相手にせず、株主である系列大企業に資金を提供した結果、社会の貧富の差が拡大し、深刻な階級対立を招いた。さらに銀行は、株主組織であるため、合併を繰り返して巨大化し、地域から集めた資金を地域の中小企業に還元せず、都市部の大企業に集中したため、地域経済の衰退を招いた。こうした株式による銀行の弊害を是正するため、地域の有力者や庶民が力を結集し、庶民が公平かつ平等に資金を利用できるよう、出資額にかかわらず、一人一票の民主的な運営原理による金融機関を設立したのが協同組織金融機関である。

日本の資本市場開放が進む中で、欧米の巨大資本が、日本のメガバンクや有力地銀の株式を購入しており、現状では大手銀行や一部地銀の株主の約3割が海外資本である。今後海外銀行に買収される銀行が出てくることが予想されているが、そうした場合、銀行経営の独立性が失われ、米銀のように株主利益第一主義による経営に変貌していくことが懸念される。すでに消費者金融の推進による多重債務者の拡大が出資法の改正を引き起こし、リスクの高い商品の抱き合わせ販売に対して公正取引委員会が優越的地位乱用の疑念があるとして、社会問題化している。そうした中で、株主の利益を考える必要が無く、買収による経営支配を不可能な一人一票の運営原理である協同組織金融機関の存在意義が重みをましてくることが期待されるところである。

協同組織金融機関の業容が拡大する中、取引先中小企業の業容もまた大企業へと進展する事例も多く、1991年に東京都の旧・八千代信用金庫が転換した八千代銀行は、このような出資・預金・貸付に関する制限は業務(取引継続)の制約となるととらえ、銀行への改組を図った。しかし、制約のない銀行が、バブル期に積極的な融資拡大を図り、その後のバブル崩壊により壊滅的な打撃とイメージダウンに陥ったことから、協同組織の業務制限は、地域の資金を地域の中小企業や庶民に還元するためのものであり、設立の目的遂行のための健全な枠組みであるということが、業界において再確認され、その後は銀行に転換しようという協同組織金融機関は現れていない。

一方、拠点都市に立地が集中する市中銀行に比べ、協同組織金融機関は顧客層のほか地域性においても民間金融機関のネットワークのより広い一翼を担っており、銀行の提供する内国為替サービスの重要なパートナーともいえる。銀行が小規模な(または親密先の)協同組織金融機関の手形交換、外国為替業務などを受託することも多い。


銀行代理店
銀行の業務の一部を、アウトソーシングなどによって任せられ、サービスを提供する銀行以外の企業のこと。

日本では銀行法により定められており、預金の預入やローンの取り扱いを、銀行以外の個人や企業が行うことができる。当初は銀行の100%子会社であることなど条件が厳しかったが、何度か規制緩和が行われ、2006年4月施行の改正では参入条件が大幅に緩和された。


日本の銀行の問題点
審査能力の問題
長年不動産や保証人を担保に融資をするビジネススタイルをとっていたため、外資系銀行に比べて企業資産の審査能力が低い。近年は、プロジェクトファイナンスやM&A等で、企業の生み出すキャッシュフローにて企業価値を判断する審査制度の確立を急いでいる。
また、近年、中小企業融資に際して審査の迅速化を目的に、書類提出のみで手続きが完結するスコアリング判定ビジネスローンを多くの銀行が展開しているが、一方で提出書類を偽造した詐欺事件が発生し、銀行員自身の目利き能力の低下にもつながりかねない。
利益率の問題
大半の邦銀は、利益原資の8〜9割が預貸金利鞘であるが、この伝統的業務に依存するビジネスモデルでは利益率が低く(邦銀の純利益率は2005年現在、1%〜0.4%と外銀に比べ非常に低い)、さらに、直接金融から間接金融の流れの中で、縮小傾向である。
この為、三井住友銀行はプロミスに、三菱UFJフィナンシャルグループはアコムといった様に、利益率の高い消費者金融業(サラ金)に出資、グループ傘下にし、連結収益のかさ上げを図っている。近年の出資法改正議論によるグレーゾーン金利撤廃の動きの中、消費者金融は、従来のビジネスモデルを維持できない可能性がある。
また、外銀のように利益に占める役務収益(M&Aや金融商品販売の手数料)割合の増加に力を入れているものの、短期での利益を追求するため、優越的地位の濫用を行い、意味合いの異なる金融商品を矢継ぎ早に客や取引先に半ば強引に、または損失リスクを告げずに売りつけて不利益を被らせることが多々ある。最近では、2005年に三井住友銀行法人営業部は、中小企業に融資する際、金利スワップ商品の購入を強要したため、公正取引委員会から排除勧告を、金融庁からは一部業務停止命令を受けた。
国際マーケットでの存在感
失われた10年の間に、多くの銀行が海外から撤退・縮小し、日本では強みがあるが外国では振るわない「お山の大将」「井の中の蛙」のようになっている。近年、メガバンクは、アジア圏を中心に再進出を図っているが、セグメント収益に占める海外割合は依然2割前後と低い。例えば、HSBCの欧州・香港外地域からの収益の比率、シティグループの米国外地域からの収益の比率は、いずれもおよそ50%である。
リレーションシップの問題
例えば、銀行員の人事異動サイクルは公務員同様、平均2〜3年である。この短いサイクルの理由は、横領や経済犯罪(浮き貸しなど)を防ぐためである。しかし、バブル景気崩壊以降は、無理な融資や、十分な査定を行わなかったために不良債権となった融資などの責任の所在を不明瞭にするための隠れ蓑に利用される場合がある。
耐震偽装問題における被害者の住宅ローン(※1)、保険会社が倒産した変額保険ローンやゴルフ場が倒産したゴルフ会員権ローン(※2)等の、返済が免責されない、などの問題がある。
※1 アメリカでは、住居が瑕疵等で不動産担保としての価値が無くなればローンが法的に免責になる。ただし、不動産取引においてその担保価値の品質保証としてエスクロー制度が利用され、また、住宅ローンはすぐに証券化されモーゲージブローカによって有価証券として取引される。ローン免責が可能な背景には、法制度の前提として、制度的にその品質管理能力とリスクの分散が図られている点がある。日本の場合は、そもそも検査機関の能力が不十分であり、不動産証券化も途についたばかりである。さらに、法的にも免責される制度はない(通常の売買契約で、商品に瑕疵また契約に錯誤・無効・詐欺がると、買主は、民法571条により担保責任との同時履行を主張して代金の支払を拒める。しかし、割賦購入斡旋、この場合の住宅ローンでは、売買と立替払契約とが別々になされているため、買主の売主に対する抗弁、つまり支払拒否が銀行に対して主張しうるかという問題が生ずる。判例による結論から言えば、信義則違反、つまり銀行が売主と密接不可分な関係であったことを買主が証明しない限り、その支払義務は免責されない)。
※2 前述の住宅ローンと同様に免責がなされないが、これらは主にバブル期を中心に業者と銀行が一体となって販売を推進したため、より銀行の責任が大きいと言え、実際に各地でローン無効の訴訟が提起されている。
また、2006年3月期決算は、各メガバンクともバブル期を上回る利益(もっとも、前年度の貸倒引当金戻入益の計上があるため、一時的な数字である)をあげた。朝日新聞は2006年11月26日付の社説で、預金者への利益還元のあり方、特に、手数料やサービスの是正が進んでいない、と主張した。一方、2006年より三菱東京UFJ銀行をはじめとする三菱UFJフィナンシャルグループは、振込手数料の一部を無料化した(窓口振込、ATMでの現金による振込、三菱東京UFJダイレクト(有人対応分)による振込、他行あては対象外。ATM時間外手数料、コンビニATM利用手数料は所定の手数料がかかる)。また、同年のゼロ金利政策解除により、各銀行の普通預金金利は上昇した。
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